昨日は教室に居残り、一人、今現在の課題を制作していました。
教室のなかでは数人のグループの子たちが、おしゃべりしながら作業中。小さい教室なので会話がよく聞こえます。そのなかの一人が金沢に行き、金沢21世紀美術館に寄ったということを言っていました。そして、金沢21世紀美術館は企画展が面白く、常設展は大したことない、と。
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ」
その人が親しい人であれば、私はその話に割って入っていたことでしょう。
金沢21世紀美術館には昨年の2月、出張の折に訪れていました。その時の企画展はトーマス・ルフ展。ドイツの写真家の作品展で、そのシリーズごとのコンセプトの思想性の高さと明確な写真との対比が素晴らしい作家でした。
しかしながら、私が本当に感動したのは、恒久展示と呼ばれている常設展示です。金沢21世紀美術館には、一般的な常設展示のようなものはありません。けれど、現代美術の、それもかなり空間を要する展示がいくつかされているのです。
一番有名なのは、レアンドロ・エルリッヒのスイミング・プールでしょう。プールの上と下に別れて手を振りあう人々の写真を見たことがありませんか?この美術館を代表する作品と言って間違いなく、これ目当ての人も多いと思います。たとえ一人で行ったとしても、知らない人同士で手を振りあうのも良いものです。
けれど私のお気に入りは別の2作品。
一つはアニッシュ・カプーアの「世界の起源(原題L'Origine du monde)」。部屋の壁一面のコンクリートに黒い穴がうがってあるというシンプルな作品ですが、その穴に強烈に引きこまれ、どこか別の次元のなかに思考がとび、まるで宇宙のなかに放り出されたようなそんな気分になる作品です。
そして、私がもっとも好きだったのは、ジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」。これは本当に単純な作品なのだけれど、これほど日常とはなんなのかを考えさせられる作品もないと思いました。人によっては1分見たら飽きてしまうかもしれないけれど、私はこの作品をただひたすら30分か1時間ぐらい眺めていました(寒くなければもっと観ていたかったです)が、本当に素晴らしい体験でした。なるべく事前情報など入れないで、ただ純粋に楽しんでもらいたい作品です。
現代美術というのはたしかに人によってはとっつきにくい分野なのかもしれないのですが、私はとても好きです。
作家との感性がぴったりと合った作品に出会い対峙すると、作品を見ているはずなのにどんどんと思考が深くなるというかある意味では無になるというか、世界と自分との境界があやふやになり、どんどんと自分が拡張していくかのような不思議な気分になります。ぼんやりとしているはずなのに、思考は研ぎ澄まされていく。そうなると時間なんてすっかり忘れてしまいます。もしかしたらそれは限りなく瞑想に近いものなのかもしれません。
現代美術を見るならば、各地方都市、それも相当に規模の大きな都市の市立美術館の常設展がよい気がしています。そういうところにはずいぶんと面白い作品が収蔵されていることが多くて、おまけに公立の常設なので入場料が格安です。
その最たるものが、今は改修中の福岡市立美術館です。改修するだけあって古い建物ではありましたが、その現代美術の収蔵品はびっくりするほどクオリティの高いものです。
前述のカプーアの作品もありますし、草間彌生のいくつかの作品はもちろんのこと、吉原治良の「白い円」も、白髪一雄の絵の具がねっとりとした作品もよかったですし、そして何よりもここにはマーク・ロスコがあるのです!
ロスコ、ロスコ、ロスコ。
ああ、彼の名前を思い出すだけで作品を観た時の感動がよみがえって来ます。彼の作品はほんとうに単純なものです。ですが、彼の作品ほど深く深く作品と世界と自分とが交わる体験をできた絵はありません。思い出しただけでうっとりします。早く福岡市立美術館の改修が終わって、ロスコを鑑賞できる日が来たらいいのになあ。
ちなみに、そのロスコに関していえば、千葉にDIC川村記念美術館という美術館があり、そこにはロスコ・ルームなるものがあるのです。数年前から知ってはいたのですが訪れる機会が今までなく、ここはいつか絶対に行きたい美術館です。
もう一つ絶対に行きたい美術館といえば、青森の十和田市現代美術館。海と山のコントラストや陰影の激しくて美しい青森の夏をドライブして、あまりにも穏やかな海沿いにある夏虫温泉に入り、そして美術館に行くというのも名案です。それは来年以降のことになりそうだけど。
私にとって美術館は旅先・出張先で観ることが多いので、昨年の秋以降、遠出する機会がほとんどなく美術館に行っていなかったのですが、ここ数日、美術について考えることが多くてなんだか不思議です。クロッキーをすこしやるようになった今、絵を見るとなにか違う感想を抱きそうで、今からわくわくします。10月以降、気温が落ち着いたころあたりに、日帰りか一泊で東京・千葉の美術館めぐりもしようかな。
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