窓の外は雨です。雨はお好きですか?
もともと雨降りが好きです。ちょっとくらいの雨だったら、傘なんてささずに雨に濡れたいと思うくらいには。
春の、草花や木々の芽吹きや成長をうながすようなやわらかい雨は、四季のなかでもとりわけ美しい雨のように思います。
今朝、雨が降っているのを見た時に、「ああ、養花雨だ」と心のなかでひっそりと思いました。
養花雨。甘雨。杏花雨。草の雨。紅雨。膏雨。木の芽雨。発火雨。万物生。
昔から春の雨のことを人々は愛してやまなかったようで、春に降る雨の表現はさまざまにあります。そしてそのどれもが、そのやさしさにお似合いの素敵な言葉たちです。
そのなかでも「養花雨」というのが不思議と頭のなかに強く残っていて、自然とそんなことを思ったのでした。けれど、誰かに向かって口にしたことのない言葉でもあります。
たぶんそれは私の身の丈に合っていない言葉のような気がしているからです。「養花雨」も「万物生」もあまりにも素晴らしすぎて、今の私が使ったらただの格好つけにしかならないような、実感をともなっていない言葉、身についていない言葉。
季節の機微をすくいとった美しい言葉がたくさんあります。いつか私もそんな言葉を口にすることが似合うようになりたいものです。
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