金曜の夜から、ひたすら愛にまつわる映画を観ています。
今のところ11本見終えたのですが、そのなかには名作といわれているものも何本かあります。そういう作品って最初はとりあえずで観ていたはずなのに、途中からどんどんと引きこまれてきて、中盤以降は誰かのたった一つのセリフで一気に泣けてしまったりで、金曜夜から感情がゆさぶられっぱなしです。
以前はこんなに涙もろくなかったなあと思うのですが、涙もろくなってからの方が本や映画の鑑賞がぐっと面白くなったような気がしています。さて、映画についてはテヒマニでご紹介するので一旦置いておこうと思います。
映画を観たり、自分のあれやこれやで、人って複雑だなあとしみじみしています。
さらっとしていたいのに、好きがたかぶると独占できるはずのないものに執着心を感じたり、そんな自分の抑えきれない感情にふりまわされて自分の変質を感じたり。けれど、本来の自分ではないと思ってしまいたくなるような醜かったり意地悪だったり情けなかったりする自分もまた、本来の自分であると認めなくてはいけないのかもしれないな、などと考えています。
さてそんなふうに人と愛は複雑だなあと思っているのですが、それをしみじみと感じさせてくれる一冊の本があります。それはアン・モロー・リンドバーグの書いた『海からの贈り物』という本です。
著者であるアンは大西洋を単独無着陸飛行で横断したことで有名なチャールズ・リンドバーグの夫人です。彼女もなかなかの傑物だったようで、大学を卒業してリンドバーグと結婚したあと、彼女自身も飛行機のライセンスを取得し、アメリカのみならず世界の女性飛行家の草分け的存在となりました。
そんなアンが結婚生活と仕事の合間に、夫と6人の子どもをおいてバカンスに来た海辺の家で執筆したのが、この『海からの贈り物』という本です。
1955年に出版されたこの本は、「浜辺」、「ほら貝」など海辺のモチーフが題になった短いエッセイから成っています。内容は、信仰や結婚のあり方などの価値観の差はあれど、どのエッセイをとってもはっとするような考え方にあふれています。
「ほら貝」の一節にこんな文章があります。
私は何よりも先に、(中略)私自身と調和した状態でいたい。(中略)義務や仕事に私の最善を尽くすために、ものをはっきり見て、邪念に悩まされず、私の生活の中心に或るしっかりとした軸があることを望んでいる。
と。妻であり母であり仕事をもつ一人の人間として、その軸を見つけるために、彼女はあたりまえと思っている日常の生活を、非日常の空間である海辺の家からとらえ直したのです。薄い本ではありますが、その密度はとても濃く、私の糧になっている本といえます。
が、彼女のことをすこし調べたらというか、夫のチャールズ・リンドバーグとの関係を調べていたら、ずいぶんと驚くようなことがわかりました。どうやらチャールズには長い間、関係の続いていた女性がおり、おまけにその人との間には3人もの子どもがいたそうなのです。
私が二人の夫婦関係を調べることになったのもこの本の「日の出貝」という篇に、どうも夫婦関係にいろいろあるのではないだろうか?という疑問を感じるような記述があったからなのですが、まさかそこまでのことが起こっているとは思いもよりませんでした。
チャールズの写真を見るととても男前な人ですし、もともとアンとの間に6人の子どももいるしなので、そんなに驚くべきことではないのかもしれないですが。ちなみにこの本が執筆された2年後からチャールズとその女性との関係は始まっています。
人と人との関係も、初めの歓喜の状態が同じ烈しさをいつまでも失わずにいるということはあり得ない。それは成長して別な段階に入り、我々はそれを恐れずに、春の次に夏が来たのを喜んで迎えるべきである。(「日の出貝」)
彼女はこの文章を書いた時にいったい何を考えていたのだろう、と想像します。どこかほっとした気持ちがあったのか、葛藤があったのか。私には、彼女のあまりにも抑制のきいた文章の中に、彼女のはげしさを感じずにはいられません。
人とは、愛とは、複雑なものですね。私はその入り口にも立っていないような気がします。
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