実をいうと満開の桜というものがあまり好きではありません。
桜は咲きはじめや散りぎわ、山の中にぽつりぽつりと咲く山桜が好みです。もうそろそろ私の好きな頃合いかと思い、久しぶりにすっきりと目覚めた今朝、桜を見に行ってみました。
夜が明けたとはいえ、まだ日の出まえ。お昼どきのあたたかさからすると肌寒い朝でしたが、澄んだ空気のなか、はらりはらりと落ちる桜。桜の蜜を吸いにきた飛びまわる小鳥、目の前の川にはにぎやかな鴨たち。よい風情です。
散りはじめた桜と同じくらいに好きなのが、不意に桜が咲いていることが立ちのぼってくる光景です。近くに桜が見あたらないのに川や水路を花びらがゆったりと流れていくのや、もう散ってしまい葉桜になった並木の道が花びらで淡いピンクに染まっている、そんな光景です。咲いている桜の姿はないけれど、桜が咲くことの美しさを強く感じます。
とくに水面を流れていく桜を見ているのがしみじみ好きで、何時間でも見ていられると思います。そんな風景を花筏というのですが、私はこの言葉がちょっと苦手です。
はないかだ。川を下る船もいいものですが、水面を優雅に流れていく美しい桜にはなんだか不似合いなような気がして。もっとはかなくて美しい言葉があればいいのになあ。
もしかしたらそんな言葉があるのかも、と思いつつ。
結局のところ、私も桜がとても好きなのです。
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