夕方、職場から一歩外に出たらうっとりとするほどの風の気持ち良さだったので外で一杯やることにした。
スーパーでノンアルコール飲料3本とポテトチップスを買い、帰宅するやいなや我が家の敷地の川を見下ろせる場所に行き、ガスバーナーで適当に火をおこし、出してきたキャンプ用の椅子にどかっと座り缶とポテトチップスを開けた。
空を見上げると半月と星がきれいだった。あたりは静かで、ぱちぱちと火が爆ぜる音と水量が減った川のせせらぎと、時折上空を通過していく飛行機の音がする。
焚き火に良い季節になった。
と、ぼんやりと椅子に座って焚き火を眺めていたのはポテトチップスの袋を開け終わるせいぜい15分程度のことで、元から小さな焚き火の火が小さくなったら、すぐに家に引き上げた。
母家に入るや私を見つけた犬と猫が、わんわんとひぎゃーの大合唱。そこまで鳴かれると仕事はともかくも、買い物の1時間と焚き火をしていた15分が少し申し訳なくなる。犬猫それぞれにご飯を出して、台所の椅子で一息ついて残っていた1本のノンアルコールビールを開ける。
今日は少し疲れた。午後の仕事がややハードだったのもあるし、買い物で猫の餌を見つけるのに手間取ったし、その買い物をしている間にとっぷりと日が暮れて洗濯物を取りこめなくなり、今夜はシーツなしで寝るしかない。洗濯物を取り込みそびれるのって実害がないのにちょっとだけげんなりしてしまうのはなんでだろう。
とは言え、洗濯物を取りこみそびれるのは、家の中にムカデやスズメバチ・ネズミが出たり、長雨の季節にカビが大繁殖することに比べたらなんてことはない。それらは里山の生活、山肌に近接して建っている家の宿命みたいなもので、同じ地域の移住者の先輩女性と「ほんと里山で暮らすの甘くないよねー」とひとしきり盛り上がった。
里山で暮らすのは甘くない。
2年目にしてしみじみと思う。
大体の家の敷地は広く、草刈りや木の手入れをすべきところが多い。命の危険がある害虫対策に気を張らねばならないし、街場からは遠い。田舎暮らしに憧れて越してきても街に戻る人がいるのも当然だし、家を継ぐはずの人たちが山を下りるのも納得だ。とにかく暮らすことに労力が要る。
私にとっては里山で暮らすことの99%が面倒くさい(もちろん街場に住む人とまったく変わらない部分もあるだろうけれど)。
それでも残り1%、朝のひんやりとした空気の心地よさや、ふとした瞬間の見慣れた木々や月明かりのはっとするような美しさ、外でお茶をしたり焚き火をするぼんやりとした時間が、最高の場所だと思わせてくれる。
それでもやっぱり、里山で暮らすのは甘くないんだな。
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